社会を舐めているのではない、「契約」と「信頼」の重さを知らないだけだ

query_builder 2025/10/03
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警備という仕事に興味を持ち、この文章を読んでくれている方々へ。


社会人としてすでに様々な経験を積んできているあなたがたの中には、「社会は結局、金とコネだ」「真面目にやってもバカを見る」と、どこか世の中を冷めた目で見ている人もいるかもしれません。

そうした感覚は、現代社会の一つの矛盾を鋭く捉えている証拠かもしれません。しかし、その認識だけで立ち止まってはいけません。

私たちが警備という職を通じて、そして人生を通じて追い求めるべきは、たった二つの絶対的な柱です。それは「信用(Credit」と「信頼(Trust」です。


あなたの先輩となる私たちは、この二つを混同する人間を「信用できない」と判断します。なぜなら、その混同は、世の中の仕組み、すなわち「契約」と「感情」の二つの領域の境界線を理解できていない証拠だからです。

この境界線を理解するために、私たちは「お金の使い方」を軸にした2×2のシミュレーションを通じて、あなたの未来の人間関係がどう変わるかを見ていきましょう。



「信用」と「信頼」を生む2×2シミュレーション


お金は、単なる紙切れやデータではありません。それは、あなたが過去に「契約通りに価値を生み出したことの証」であり、一種のエネルギーの記号です。このエネルギーを、私たちは「契約の場」と「親愛の場」の二つの異なる領域で、どう使うべきか。


お金を使う場

使い方(内面的な態度)

額面通り(感情を排し、事実に基づいた使用)

感情補正(感謝や配慮など、額面以上の感情を乗せる)

I. 契約関係の場 (仕事、売買、雇用)

求めるもの:信用 (Predictability)

ケースA: 契約の鉄則

ケースB: 感情の転嫁と境界線の崩壊

II. 親愛感系の場 (チーム、友人、家族)

求めるもの:信頼 (Aspiration)

ケースC: 冷たい合理主義者

ケースD: 真の信頼構築


ケースA: 契約の鉄則(信用:高)

  • 場面:警備員として、契約で定められた22時から翌朝6時までの夜間巡回業務を行う。
  • 行動:監視カメラのチェック、巡回ルートの確認、報告書の作成を、一分の過不足なく、感情を排して遂行する。残業が発生すれば、時間単位で明確に請求する。
  • 結果:社会の円滑性:極めて高い。 顧客や上司は、あなたの行動を予測可能と見なし、「この人物は、感情や私的な事情に左右されず、常に価値を生み出す」という信用を置く。あなたの土台は揺るぎない。


ケースB: 感情の転嫁と境界線の崩壊(信用:低)

  • 場面:巡回中、顧客から「契約外のちょっとした私的な用事」を頼まれ、「親切心」で引き受ける。または、「この仕事が好きだから」と無給で過剰なサービスを提供する。
  • 行動:「無償の優しさ」という感情を乗せ、契約のラインを曖昧にする。後で不満が溜まっても、金銭を請求できず、結果的に「あの人は気分によって仕事の質が変わる」という評価を受ける。
  • 結果:社会の円滑性:低い。なたの観測者DB(自己認識)が、契約の構造と感情の非対称性を区別できていない。一時的な「親切」は「感謝」を得るが、信用は失う。なぜなら、契約は「感情」を排した安定性の上に成り立つからです。あなたは自分自身の不満を、顧客や職場に転嫁していると見なされる


ケースC: 冷たい合理主義者(信頼:低)

  • 場面:チームの慰労会で、先輩が多めに支払ってくれた際、「額面通り」に自分の分だけ正確に割り勘の金を渡し、「ありがとうございました」の一言もない。
  • 行動:親愛の場においても、契約の場の論理(ギブ&テイク)を額面通りに持ち込む。
  • 結果:社会の円滑性:冷たい。 「この人は、人間関係も契約としてしか見ていない」と見なされる。信用は失わないかもしれないが、その上の「信頼」(感情的な繋がり、互いの人生を預け合う可能性)は絶対に生まれない。あなたは孤立を選ぶことになる。


ケースD: 真の信頼構築(信頼:高)

  • 場面:チームメンバーが体調不良で急遽欠員が出た。あるいは、先輩から個人的な相談を受けた。
  • 行動:契約の場ではないが、自らの向上心反省に基づき、シフト外の時間を使って献身的にカバーし、金銭ではなく「感謝の気持ち」という感情を乗せて相手を慮る。奢ってもらったら、後日、相手が喜びそうなもの(額面以上の心遣い)を贈る。
  • 結果:社会の円滑性:極めて高い。 あなたは「契約」と「感情」の境界を知っている上で、自ら不満吸収役を買って出た。この行動は「利他的な予測可能性」を生み出し、真の信頼として蓄積される。



お金は「解決」の道具ではない、「証明」の記号である


最初に述べた通り、「お金を持っているから信用ができるのではなく、お金の意味を知っているから信用ができる」のです。

お金の意味とは、「契約(信用)」という土台で、あなたがどれだけ価値を生み出すことができたかの証明書です。

この証明書を使って、安易に「感情(信頼)」を買おうとする行為は、自らの内面的な成長機会を放棄し、外部の記号(お金)でごまかそうとする、最も安易な不満転嫁に他なりません。

真に信頼される大人とは、契約の場では感情を排して鉄壁の信用を築き、親愛の場では、その信用の上に積み重ねた自らの努力の証(お金や時間)に、あえて豊かな感情を乗せて差し出せる人間です。

最後にこれを踏まえて、最終シミュレーションを追加します。


ケース X:あなたの未来を閉ざす「信用の自爆テロ」

さて、これまで「契約の鉄則」と「親愛の心遣い」の境界線について学んできました。最後に、あなたが良かれと思ってやりがちな、しかしあなたの社会的な価値をゼロ、いやマイナスにまで暴落させる最悪のケースをシミュレーションしましょう。

それは、「金で信頼をショートカットしようとする行為」です。私たちはこれを「信用の自爆テロ」と呼びます。

🚨具体例:なぜあなたの親切は「怖い」のか

1.  仕事もろくに覚えていないのに、初日から先輩全員に高額なコーヒーを奢り、数万円はしそうな高級菓子をチームに贈る。

2.  合コンで会ったばかりの相手に、次の約束を取り付けるためにいきなりブランド物のプレゼントを渡す。

あなたの心には「早くみんなと仲良くなりたい」「良いヤツだと思われたい」「手っ取り早く認められたい」という善意(信頼のショートカット)があるかもしれません。

しかし、周囲の観測者(社会のOS)は、あなたの行動をこう翻訳します。

周囲の反応: 「え、何この人怖い」「仕事の基礎もできてないのに、こんなことだけするなんて、何か下心があるんじゃないか?」「社会の基本ルール、分かってる?」

あなたの資産価値: 「信用スコア:100(取引停止)」


💣最悪の選択である理由

思い出してください。お金の最も基本的な機能は「契約の通貨」です。決められたルール通りに、過不足なくお金を使えること。これが、あなたが社会のルールを理解している人間であることの最低限の証明書であり、「信用」の源泉です。

信用は、時間をかけて、あなたが「感情や私的な事情に左右されず、価値を生み出す人間である」ことを証明して初めて築かれる土台です。

あなたが、この「契約」と「証明」のステップを無視して、いきなり金で「親愛」を示そうとした瞬間、あなたは周囲にこう叫んでいるのと同じです。

「私は、お金の基本的な使い方も分かりません。契約やルールの重要性も理解できません!」

これは「良いヤツ」のアピールにすらなりません。社会の基本OSをインストールできていない、ルールを理解できない危険人物という自己紹介になってしまいます。信頼を築くどころか、あなたの存在そのものが「信用できない」という致命的なアラートを周囲に鳴り響かせる。

金を払って、未来永劫続く「信用できないヤツ」というデジタルタトゥーを自ら刻む行為。これこそが「信用の自爆テロ」です。


結び:警備という最高の訓練場


警備業は、この「信用」の土台を築くための最高の訓練場です。

まずは、契約通り、マニュアル通りに、一分の過不足なく職務を遂行してください。感情を排して、冷静に、ただひたすら価値を生み出すこと。それがあなたの信用となり、あなたの給料となります。

その信用が揺るぎないものになった後、初めて、あなたの感情を乗せた心遣いや親切が、真の信頼へと昇華されるのです。

あなたがこの仕事を通じて、契約という冷徹な論理と、人間関係という温かい論理の両方を操れる「器」を持つことを、私たちは期待しています。

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O.A.E. 株式会社

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電話番号:0567-69-5391

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